ファームから一杯へ — コスタリカコーヒーのトレーサビリティ
農園、収穫、精製、輸出、焙煎まで。コスタリカスペシャルティコーヒーの完全な生産過程とトレーサビリティの仕組みを解説します。
「トレーサビリティ」はスペシャルティコーヒー業界のキーワードですが、実際に何を意味するのかを正確に理解している方は少ないかもしれません。コスタリカコーヒーの生産過程を順を追って解説し、一杯のカップに至るまでの各ステップと、それぞれで品質がどう形成されるかを説明します。
1. 栽培(Cultivation)
コスタリカでは8つの認定産地において、主にカトゥーラ(Caturra)、カトゥアイ(Catuaí)、SL28などの品種が栽培されています。1989年以降、ロブスタ種の栽培は法律で禁止されており、全量アラビカ種です。
標高1,200〜1,900mの高地では、低温と昼夜の温度差がコーヒーチェリーの熟成を遅らせ、糖分と有機酸の蓄積を促進します。この遅い熟成が複雑な風味の基盤となります。
2. 収穫(Harvesting)
コスタリカの主な収穫期は10月から2月です。品質を重視するスペシャルティ生産者は、完熟したチェリーのみを手摘みする「セレクティブピッキング」を採用しています。一本の木でも熟度が異なるため、複数回に分けて収穫します。
手摘みは機械収穫に比べてコストが高いですが、未熟・過熟チェリーの混入を防ぎ、最終的なカップ品質を大幅に向上させます。
3. 精製(Processing)
収穫後24時間以内に精製が開始されます。コスタリカでは「ベネフィシオ(Beneficio)」と呼ばれる処理施設で行われます。精製方法はウォッシュド、ハニー、ナチュラルの3種類があり、それぞれで風味プロファイルが大きく異なります。
ハニープロセスの場合、ミューシレージの残留量をレッド・イエロー・ブラックと分類し、精密に管理します。乾燥ベッドでの乾燥期間は通常8〜21日です。
4. 品質管理(Quality Control)
コスタリカコーヒー庁(ICAFE:Instituto del Café de Costa Rica)がすべての輸出コーヒーの品質を監督します。SCA(スペシャルティコーヒー協会)基準では、80点以上のスコアがスペシャルティグレードの認定基準です。
品質検査の主要項目:
| 検査項目 | スペシャルティ基準 |
|---|---|
| SCAカッピングスコア | 80点以上 |
| 欠点豆数(300g中) | 一次欠点:0個、二次欠点:5個以下 |
| 水分含有量 | 10〜12% |
| スクリーンサイズ(均一性) | 指定サイズ±5%以内 |
5. 輸出(Export)
ICAFE発行の原産地証明書(Certificate of Origin)と植物検疫証明書(Phytosanitary Certificate)が輸出時に必要です。これらの書類がコスタリカ産コーヒーの産地真正性と検疫適合を証明します。
コスタリカから日本への海上輸送は通常30〜40日かかります。生豆の状態であれば適切な保管条件下で12〜18ヶ月間の品質維持が可能です。
6. 焙煎と販売(Roasting & Retail)
日本のロースターが生豆を受け取った後、焙煎度と焙煎プロファイルがカップの最終的な表情を決定します。スペシャルティコーヒーの場合、産地の個性を活かすためにライト〜ミディアムローストが一般的です。
焙煎日から5〜28日が最も飲み頃です。この期間内での消費を推奨します。
トレーサビリティが意味すること
農園名、産地、収穫年、精製方法、焙煎日が明記されたコーヒーは、その一杯の背景をすべて追跡できます。これはスペシャルティコーヒーの核心的な価値であり、品質と信頼性の証明です。